農学部 植物生命科学科
教授 下野 裕之
作物学
コメ作りの現場は担い手の高齢化が急速に進んでいる中,農家一人あたりの経営面積の規模拡大は避けて通れない状況です.イネの栽培で最も忙しい季節は春で,種まき,田植え,田んぼの耕起などが重なり,その作業の効率化が規模拡大のカギとなります.そこで,岩手大学では2008年より作業を分散する新たな作型として,忙しい春ではなく,前年初冬の雪が降る前に種まきを済ませることによって作業分散を実現する研究を進めています.
初冬に播いた種が翌年まで生存する率はわずか数%と低く,初冬直播きを実用技術にするためにはこの生存率を高める必要があります.そこで,岩手大学では鉄を用いた新たなコーティング技術を開発し,生存率を25%以上に高めることに成功しました.目標とする50%の生存率を目指し,コーティング技術の高度化,休眠制御技術の開発,耕起方法の改良など,実用化に向けて多面的に研究を進めています.
イネの初冬直播き栽培(附属寒冷フィールドサイエンス教育研究センター 由比 進 教授)
作業分散?規模拡大のため超省力初冬直播き水稲栽培法の確立(農学部 下野 裕之 教授)
株式会社西部開発農産における初冬直播き栽培への取り組み(株式会社 西部開発農産 生産部 菅野 一成 氏)
高い競争率を突破し、農林水産省の大型予算?生研支援センターのイノベーション創出強化研究推進事業の支援(1億5千万円、総額)をさらに3年継続して受けることになりました。
事業:生物系特定産業技術研究支援センター「イノベーション創出強化研究推進事業」開発研究ステージ
期間:中超直播3~5年度(3年間)
課題名:「わが国の稲作のイノベーションを実現する初冬直播き栽培法の確立」
研究機関: 計28機関:14の試験研究機関(青森県産業技術センター,宮城県古川農業試験場,山形県農業総合研究センター,福島県農業総合センター,農研機構 [北海道農業研究センター,東北農業研究センター(本所),東北農業研究センター(大仙拠点),中日本農業研究センター(北陸拠点),農業 環境変動研究センター],東京大学,北海道大学,秋田県立大学, 弘前大学)と14の生産者(技術の実証協力を担当する3ha~850haの多様な経営規模?経営形態の全国の生産者).
研究概要:初冬直播き栽培において,省力?低コストで,慣行の春の直播と同等以上の収量?品質を達成し,積雪寒冷地の気象や土質が異なる環境において,経営の規模?形態が異なる生産者が容易に導入できる技術体系を構築することを目標とする.
そのためには,「初冬直播き栽培」において,以下の4つの目標を達成する.
1.前年に収穫した種子を用いて出芽率を50%まで高める技術開発,
2.病害虫の発生率を春の直播と同等の農薬使用回数で同等まで抑える技術開発,
3.施肥管理を最適化することによって春の直播と同程度以上の収量を達成する技術開発,
4.普及支援のため,生産者の位置情報等を入力すれば,最適な種子処理法,播種日,播種量,耕起播種法などを提案できるシステムを構築.
https://www.naro.go.jp/laboratory/brain/innovation/news/2021/139231.html
https://fuyugoshi.wixsite.com/shotomaki
県内の生産者の現地の状況です。
盛岡タイムス(6月22日付)、河北新報(6月24日付)にも、初冬直播き栽培について掲載されました。
以下は県内の生産者の現地の状況です。実証実験も進んでいます!
①西部開発農産(岩手県北上市)( https://www.seibu-kaihatsu.com/ )
苗立数:約150本/㎡(品種 どんぴしゃり)
西部開発農産ホームページ
https://www.seibu-kaihatsu.com/2021/05/29/%E5%86%AC%E8%B6%8A%E3%81%97%E7%A8%B2/
②(株)かきのうえ(岩手県八幡平市)
苗立数:85本/㎡(品種 あきたこまち)
暖冬の影響が心配でしたが,今年も初冬直播き栽培で高い出芽率を達成!
岩手大学次世代アグリイノベーション研究センター News Letter No.2抜粋
「熱帯原産のイネを初冬にタネ播く新技術」
こちら
からご覧ください。
?2018 年春より「初冬直播き栽培」は、社会実装を目指す農研機構生研支援センターの研究事業に採択され、北海道から福岡まで10 道県11 地点の大学?公的研究機関と連携して試験を進めています。実証試験として初冬に機械播種した初冬直播き栽培の水田の様子(2018年初冬に播種し2019年秋に収穫)をまとめました。実証試験を実施した全地点で成熟まで到達し,春播きと同程度の収量水準を示しました。
研究は続く
2023.2.17付(農政面) 稲作、新時代へ 広がる「初冬直播き栽培」
2022.9.2付(8面)掲載:初冬直播き栽培で安定経営へ 播種の機械が増え繁忙期を緩和
読売新聞オンライン 2021.07.30付掲載 温暖化進めば、今世紀末に国内の米収穫は2割減…暑さに強い品種必要
2021.11.17付(7面)掲載 初冬直播き 種まき本格スタート
2021.06.22付電子版掲載
オンラインニュース 2022.03.05付掲載 水稲の「初冬じかまき」東北に浸透 春に集中する作業、分散可能に
2021.11.17付(24面)掲載:古い種もみで直播越冬栽培
2021.06.24掲載
2021.02.04(1週号)掲載 水稲の「初冬直播き栽培」 水田で種もみを越冬 農閑期に作業を分散
2022.08.12 営農特報面掲載
2020.06.14 総合1面掲載
2022.7.25掲載 「イネの初冬直播き栽培 収穫1年経過の種籾でも出芽率40% 普及へさらに前進」
2020.12.03掲載 イネの初冬直播き栽培 挑戦農家が5倍増
2020.5.30掲載 世界で例のない「イネの初冬直播き栽培」 実用化へ光明
2019.10.29掲載 春の手間省きたい イネの初冬直播き栽培、実用化に大きな一歩
2019.2.10掲載 岩手発 イネの初冬直播き栽培実験本格化 省力化 農家の救世主
2018.11.20掲載 イネの初冬直播き栽培実験がスタート
2020.11.24掲載 初冬のイネの種まき、岩手大、これまで得られた結果検証
2022.11.15放送 mit Live News(FNN プライムオンライン)
"イネの初冬直まき" 実用化へ最終段階 岩手大学農学部などが研究<岩手県>
2021.11.16放送(FNN プライムオンライン)
2022.10.12放送 ニュースエコー(WEBより)NEW
イネの初冬直播き栽培も提案~農業を「シンカ」する 岩手大教授らが講演
2022.7.13放送 おばんです岩手(岩手 NEWS WEBより)
稲の種もみを秋にじかまき」岩手大学が生産者対象に講習会
2021.11.16放送